クリスチャン・ボルタンスキー アニミタス-さざめく亡霊たち(東京都庭園美術館)
フランスの現代美術家クリスチャン・ボルタンスキー。
彼は日本も馴染みのある美術家で、香川県の豊島の「心臓音のアーカイブ」「ささやきの森」
大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレの「最後の教室」など、
いくつかの芸術祭などに出展をしています。
東京都庭園美術館を舞台にした展示会です。
休日の午後に訪問したのですが、チケット売場に10人程度並んでいたものの、館内にはスムーズに入れました。館内も観賞に差し支えるような混雑はありませんでした。
まず、これから観賞する人には、館内の一室で流しているインタビュー映像を始めに観ることをおすすめします。
その中で、ボルタンスキー自身が作品の解説をしていますので、
作品の理解がしやすくなるかもしれません。
さて作品ですが、1階は「さざめく亡霊たち」。本展唯一の新作だそうです。
部屋に入ると、どこからかささやくような声がいくつも聞こえてきます。
その「声」が作品なんですね。亡霊のささやきが聞こえてくるという設定なんですが、
これなどは歴史的な建物があってこその作品ですね。
少し残念に感じたのが、流れてくるささやきがナレーションぽい語り口だったこと。
幽霊というテーマであれば、感情の入った台詞でもよかったのではないかと。
あんまり芝居がかってしまうと興ざめですけどね。
あと、天気のよい昼間に観賞するよりも、暗くなってからのほうが雰囲気があってよいかもしれないです。
2階に上がると、2作品が展示
影の劇場
部屋から覗き込むようにして観ると、影絵が投影されています。
一見、おとぎ話のような雰囲気なのですが、やはり死者をテーマにしたような内容。
心臓音
豊島の「心臓音のアーカイブ」の移設バージョン。
狭い部屋の一室で展開しているので豊島のものほどの大きさはないですが、
これはこれで雰囲気あってよいです。心臓音の振動に合わせて部屋のガラス戸が鳴っているのが、建物自体が共鳴している感じがしました。
そして、新館展示室。
帰郷/眼差し
この「眼差し」が、個人的にはもっともお気に入りでした。
目がプリントされた薄い布が、何枚も吊るされて迷路みたいな状態になっているのですが、
手前の布の目と視線を合わせていると、透けて見える奥の布から問いかけるような視線を感じるというドキッとするような作品。何週も廻ってしまいました。
もうひとつの帰郷は、中央のスペースに山のようぬ盛られた金色の物体…。???となってしまう作品でした。
アニミタス/ささやきの森
モニターの表裏に、チリの「アニミタス」と豊島「ささやきの森」とどちらも風鈴を用いたインスタレーションの映像が流れいます。
そして、モニターの前には干し草が弾かれていて、視覚、聴覚、嗅覚すべてで作品とふれあうことができる設定になっています。できれば、干し草に座って観賞したいところでした。
発表済みの作品が多いですし、会場の大きさや設備による制限で、作品数や展示規模の限定されていることもありますが、
一方で、庭園美術館だったこそ表現できたこともある展示会だった気がします。
彼の死生感だったり、すべての人を重要な存在として記録したいという意思が反映された作品と建物の歴史と雰囲気が相乗効果となっています。
最後に冒頭で言及した、彼のインタビューから一番感銘を受けて言葉を紹介します。
「人は自分とちょっと異なる他者に対して残酷だ」
彼の言葉はまるで哲学者のように感じるほど難しいこともありますが、
この言葉は、人間の危うい性質を表しているように感じました。
クリスチャン・ボルタンスキー -アニミタス―さざめく亡霊たち-
- 作者: クリスチャン・ボルタンスキー,祖父江慎,畠山直哉
- 出版社/メーカー: パイインターナショナル
- 発売日: 2017/01/16
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