2Dプリンターズ(栃木県立美術館)
宇都宮市にある栃木県立美術館で面白い視点の展覧会が開催されています。ちょっと近くに行く予定に合わせて訪問みました。
展覧会のタイトル『2D(にじげん)プリンターズ/芸術:世界の承認をめぐる闘争について』。
なにやら難しそうですね。この美術館では以前より、美術の位置を科学理論との対比から再考する独自の取り組みを定期的に開催しており、今回はその3回目。(過去2回は未見です)
今回の趣旨です。
21世紀の今日、医療分野でも有用性を発揮する3Dプリンターの出現が社会の注目を集めています。
同時に3Dプリンターというネーミングは、複製芸術を連想させるだけでなく、芸術における自律的価値への疑問を投げかけています。すなわち芸術における有用性の有無という古典的問いの再考をも促しています。
本展は写真、版画はもとより印刷物、絵画、ドローイング、彫刻など約150点における転写や複製技術、機会化情報などと手仕事とを対比させながら、この今日的問題からアンチ・エスタブリッシュメント時代の美術作品のもつ批評可能性を考察するものです。
やっぱり難しいです。要は、『複製』というのがテーマなのかなというぐらいにして観賞にはいりました。
展示は19世紀の銅板画から始まり、分かりやすいところですと、森村泰昌。これはそうそうまさしく複製せすね。あとは、歴代のアメリカ大統領と自身の写真切り貼りした郭徳俊とか、同じくアメリカ大統領をモチーフとした橋本聡とか・・・。こう書いて行くと、複製となるとステートメントにあったようにどこか批評的な要素が強くなるの傾向にあるかもしれません。
他にも、昨年、東京国立近代美術館で観たトーマス・ルフのポートレートなども展示されており、全200作品、かなり充実した内容でした。
個人的に気になった作品をご紹介。
田中功起のドローイング「世界を救うためのプラン」。彼は、この展覧会でも展示されてますが映像での作品のイメージが強い作家ですが、ドローイングが面白かったです。
上に書いた批評精神というより、地球を取り巻く様々の問題を解決する方法について、荒唐無稽な提案をしてくれてます。そのゆるくて、どこまでも優しい作品に、ひとりニヤニヤが止まりませんでした。
そして、最後に福田美蘭。恥ずかしながらこの日まで注意して作品を観たことがなかったのです。
メインビジュアルにも使用されている作品は、「ルノワール“日なたの裸婦”」。タイトルどおりルノアールの絵を模写してるのですが、モデルの表情や色味を変えることによって、いろんな表情を。他にも、最後の晩餐や富嶽36景をモチーフにした作品も展示されていましたが、今後注目したい人にエントリーしました。
美術館の狙いを全て汲み取ることまではできませんでしたが、新たな発見もあり実りある展覧会でした。